インフラ開発 フィリピン鉄道


アジア開銀、民間資金でインフラ開発 まずフィリピン鉄道
2015/5/12 13:34

【マニラ=佐竹実】アジア開発銀行(ADB)による民間マネーを活用したインフラ開発が本格的に始まる。新興国の官民パートナーシップ(PPP)事業を民間銀行などと共同で助言する業務の第1弾として、フィリピンの大規模な鉄道整備が近く決まる。助言で事業の確実性や採算性が高まってインフラ開発の進展が期待できる。日本企業にとっても商機が広がりそうだ。

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アジアでは年間8千億ドル(約96兆円)近い膨大なインフラ需要があり、中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立準備を進める。だが「開発銀や民間が融資できるほど実現性のある事業は少ない」(ADB幹部)のが実情だ。いかに民間マネーを呼び込んで事業化につなげられるかが焦点になっている。

ADBは、各政府が進めるPPPを助言し、インフラ事業を自ら作り上げることでAIIBとの差別化を進める。入札などに透明性を持たせることで、民間資金を呼び込もうとしている。商業施設や住宅地など地域開発との一体化で事業の魅力を高めることも視野に入れる。

PPPの助言業務で日本の3メガバンクを含む先進国の8民間銀行と提携した。フィリピンのほかインドやインドネシアなどで約30件が助言の候補に挙がっており、合計で3兆円規模になる見通しだ。

第1弾となるのは、比ルソン島の国有鉄道の改修・延伸工事で、総延長は653キロ、事業費は38億ドル(約4500億円)にのぼる。2016年にも着工する予定だ。比政府は近く、ADBと事業の助言業務について調印する。ADBと政府系の比開発銀行(DBP)が事業者の選定や資金調達の方法などを助言することで実現性を高め、手続きが迅速に進むことが期待される。

フィリピンではアキノ政権がPPPによるインフラ整備を政策の目玉に掲げている。ただ進捗は遅く、50以上の計画に対し、実際に着工にこぎ着けたのは数件にとどまる。比国有鉄道の工事も計画自体は存在していたが、政府側のノウハウ不足などの問題から進んでいなかった。

民間をうまく活用できずに計画だけが塩漬けになっているケースはアジアで目立つ。今回のフィリピンの鉄道事業は、ADBやメガバンクなどによる共同助言が域内の開発を加速させるかどうかの試金石になる。

ADBの融資など開発業務を巡っては、審査や手続きの遅さに対する新興国の不満が強く、AIIB支持につながった面がある。ADBは融資案件の審査期間を従来より6カ月早めるなどの改革案を打ち出している。こうした取り組みを実行して新興国の支持を得られるかが課題となる

今回の記事は、
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM12H1X_S5A510C1MM0000/

 ▼官民パートナーシップ インフラ整備や公共サービス運営などに民間の資金力を活用することで、行政の効率化を目指す取り組み。「パブリック・プライベート・パートナーシップ」の頭文字を取って「PPP」と呼ばれる。英サッチャー政権によるPFI(民間資金を活用した社会資本整備)から発展し、アジアでも1990年代に広まった。新興国では事業リスクの所在や入札の仕組みなどが不透明でPPPの活用が遅れている。日本政府はPPPによるアジアのインフラ整備の促進を重要課題に掲げる。

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