フィリピン人メイドを雇う


メイドさんと「さん」付けしてしまう日本人のメイドに対する立ち位置

この考えの時点でもうフィリピン人メイドに舐められてるのだ。

住み込みのメイドさんを雇う日本人の本音

「メイド大国」シンガポールの事例に学ぶ

シンガポールでメイドさんを雇う日本人の方々に本音を聞きました

※前回記事:凄すぎる!シンガポールの「メイド大国」事情

「自宅にあるお金やものが盗まれる」「男の人を勝手に家に連れこんだ」「見えないところで子どもを虐待していた」。

シンガポールに住んでいる人であれば、よく耳にする外国人メイドさんに関する悪いうわさだ。

この話だけを聞けば、メイドさんを雇うことを躊躇する人もいるだろう。しかしシンガポールでは、実に約5世帯に1世帯が住み込みの外国人メイドさんを雇っている。

シンガポールでメイドさんとして働く女性は、インドネシア人がいちばん多く約12万5千人。次いでフィリピン人約7万人、ミャンマー人約3万5千人である。その他タイ、インド、スリランカなどさまざまな国籍の女性が働いている。

他人、ましてや外国人が自宅に入ることへの抵抗感。本来、自分がやるべき家事や育児を依頼することへの罪悪感。さらにコミュニケーションは、英語が基本。

外国人メイドさんと同じ屋根の下で暮らすことは、たやすいことではないと感じる人も少なくないだろう。

そこで、シンガポールで外国人メイドさんを雇っている日本人女性5名に集まっていただき、座談会を開催。メイドさんとの生活について語ってもらった。

【参加者プロフィール】
Aさん:フィリピン人を雇う4児(13歳、10歳、7歳、3歳)の母。パートタイム勤務
Bさん:フィリピン人を雇う1児(1歳)の母。フルタイム勤務。
Cさん:ミャンマー人を雇う2児(3歳、1歳)の母。主婦
Dさん:インドネシア人を雇う2児の母(8歳、5歳)。フルタイム勤務
Eさん:インドネシア人を雇う2児の母(5歳、2歳)。週2日パートタイム勤務

「雇わない」ではなく「いかにいい人を雇うか」

――メイドさんを雇うことに抵抗はありませんでしたか?

Bさん:雇う前に、メイドさんとハッピーに暮らしている友人宅に行き、イメージを膨らませました。最初は他人が家にいることに違和感がありましたが、朝起きたら、家がピカピカで感動しました。1週間もしたら慣れました。

Aさん:うちは子どもが4人と多いこともあって、シンガポールにくる前から雇うことを前提としていました。大切なのは「どんな人を雇うか」。自国の家族を養う責任感を持って働いている、過去の雇用主との契約を重大なトラブルなく満了している人などを条件に挙げました。

Cさん:私は、家事や育児を母親がやることで、家庭というものができ上がるというイメージがあったので、雇うことには抵抗がありました。正直なところ、今でも迷いながら、というところです。

――具体的にメイドさんにどんな仕事をお願いしていますか?

Dさん:私はフルタイムで働いているので、こどものバス通学の送り迎え、習い事の付き添い、夕食の準備など基本的にすべてお願いしています。子どもの熱が出たときのお迎えもメイドさんにお願いしています。特に子どもが複数人いる家では、人手があるほど助かるので、メイドさんの存在は心強いです。たとえば2人の子どものうち、ひとりが風邪を引いて私が看病しているときに、メイドさんに元気な子の相手をしてもらっています。

Aさん:働いて帰ってきて夕飯ができているのは本当にありがたい。以前、日本で子ども3人を育てながら働いていたときは、帰宅後も本当に目が回るようでした。

Eさん:うちは旅行にも一緒についてきてもらっています。旅行先でシッターさんを雇うこともできるけれど、子どもも慣れていないし信頼もできない。私たちが泊まるホテルの近くの安めのホテルに泊まってもらい、日中サポートしてもらいます。

――一方、これだけは母親である自分がやると決めている家事や育児はありますか?

Bさん:子どもをお風呂に入れることと、寝かしつけは私の仕事。お風呂で子どもとゆっくり時間を過ごすようにしています。

Aさん:わが家では、「家事」と「育児」で大きく仕事を分けています。家事はメイドさんに、育児は私がやっています。

Eさん:うちは子どもが日系の幼稚園に通っているので、子どもの宿題は全て日本語。メイドさんは日本語が堪能なわけではないので、宿題をみるのは私の仕事です。

住み込みだからできる「朝」と「夜」のサポート

――住み込みメイドさんのメリットは何ですか?

Dさん:どこの家もそうだと思いますが、子どもが学校に行く前や、寝る前が一番忙しいんですよね。朝は子どものお弁当も準備しなくちゃいけないし。その時間にメイドさんがいてくれるのは本当に助かります。

Eさん:以前、インドネシアに住んでいました。インドネシアに住んでいる日本人ママの多くは、最初はパートタイムの通いのメイドさんを雇います。しかしそのうち雇うことに慣れ、朝と夜に働いて欲しくなり、結局は住み込みのメイドさんに切り替える人が多かったです。

Dさん:旦那さんの方が住み込みメイドさんを嫌がるケースがありますよね。

Cさん:うちは主人の方が「ハッピーワイフ、ハッピーライフ」と言って、メイドさんを雇うことに積極的でした(笑)。これは助かりましたね。

座談会に参加してくださった、外国人メイドさんを雇う日本人女性たち

――メイドさんを雇って、驚いたこと、嫌な思いや怖い思いをしたことはありませんか?

Bさん:子どもがいると、メイドさんにゆっくり日本食の作り方を教える時間はありません。ある日、お味噌汁にトマトが入っていたときはびっくりしました。野菜を入れるとは伝えたけれど、まさかトマトを入れるとは。あとは前の雇用主のハウスルールが抜けず、メイドさんが乾燥機をフル活用。洋服が縮んだこともありました。

Aさん:ある日、子どもがごはんを食べたくなくて、リビングを走り回ってたんです。わが家のルールでは、座って食べないなら食べなくてもいい、としていたのですが、メイドさんは追いかけまわしてテレビの前で食べさせていました。しつけのルールが違うときは、その都度メイドさんに伝えています。

Eさん:シンガポールではありませんが、インドネシアで初めて雇ったメイドさんとの間ではトラブルがありました。鍵がかかっている引き出しからお札を2枚ずつ抜いていたことが発覚したんです。怖くて鳥肌が立ちました。

ルールを共有し、モチベーションを管理する

――メイドさんと上手く生活していくために工夫していることはありますか?

Bさん:わが家では、メイドさんを受け入れる際に5ページほどのハウスルールを作って共有しました。もちろんその通りに行っていないものもありますが、「わが家の期待値はこれ」と伝えられたのはよかったと思います。

Dさん:うちでは、メイドさんに日本語を教えています。簡単な日本語の絵本を読めるようになり、子どものそろばんの付き添いに行くうちに、そろばんもできるようになりました。できることが増えれば、それだけあなたの市場価値が高まるんだよ、ということを伝えてるようにしています。

――メイドさんとのコミュニケーションはどうしていますか?英語ですか?

Cさん:ミャンマー人のメイドさんを雇っているんですけど、彼女は英語ができなくて。文章ではなく簡単な単語、それもシングリッシュ(シンガポール訛りの英語)っぽく話せば伝わることがわかりました。日々の生活でそれほど高度な会話は必要ないので、支障はないです。

Eさん:わが家のメイドさんも英語がダメ。私がインドネシア語を覚えました。でも初めは私もインドネシア語ができなかったので、絵を描いて、指差しをしてコミュニケーションを取っていました。

Aさん:家族内では日本語で、メイドさんとは英語です。メイドさんは日本語がわからないので、それが家族とメイドさんのちょうどいい距離感になっているかも。

――様々な国のメイドさんがいますが、宗教や習慣上、気をつけていること、気になることはありますか?

Aさん:フィリピン人のメイドさんはクリスチャンが多く、彼女たちにとってクリスマスは特別。ある朝起きたら、クリスマスツリーが飾り付けられていました。

Bさん:うちもテーブルがクリスマス仕様になっていました。それからお国柄といえば食べ物も気になります。フィリピン人は、とにかく炭水化物をたくさん食べるからか、おかずの味付けが濃くなりがち。注意しないと、お味噌汁がどんどん濃くなっていく。

Cさん:ミャンマー人のメイドさんで、宗教は仏教。ミャンマー人のメイドさんを雇うことに決めたのも、日本人にとって仏教文化はなじみがあるかなと思ったから。今のところ特に違和感なく過ごせています。

Dさん:うちはインドネシア人でイスラム教徒。わが家もイスラム教徒だから、断食や断食明けのお祝いの大切さも共感できます。ハリラヤのときは、ボーナスを奮発してるんです。

Eさん:うちのメイドさんもイスラム教徒。豚肉は調理できるけど食べない。断食の時期は、やはり体力的に大変そうなので、仕事量を少し減らしたりしています。

子どもとメイドさんの関係

――ご家族とメイドさんの関係について教えてください。先ほどもしつけの話が出ましたが、子どもとメイドさんの関係はいかがですか?

Cさん:子どもがもうすぐ3歳、下の子が1歳半。最近メイドさんを雇い始めたんですが、まだ子どもはメイドさんに懐いていないです。数時間くらいなら預けて外出できるけど、子どもたちが慣れるまでもう少し時間がかかりそう。

Bさん:うちは子どもがまだ1歳。メイドさんと子どもが一緒にいる時間が長いからか、メイドさんに懐きすぎてしまって、私が寂しくなってしまうことも。メイドさんが子どものことを可愛がってくれている証拠なのだけれど、母親として複雑な心境ですね。

Eさん:子どもが「メイドさんに全部片付けてもらえる」と間違って認識しないように気をつけています。もし、子どもが片付けるべきところをメイドさんがやってくれたら、「片付けてくれたよ。お礼を言いなさい」と子どもに注意しています。

――旦那様とメイドさんの関係はいかがですか?

Aさん:メイドさんを雇ってから、何もやらないことが当たり前になってしまいました。子どものしつけも気になるけど、旦那の方もちょっと……。このままでいいのか心配です。

Eさん:夫が家事育児をしなくなったのはわが家もそう。旦那さんに頼る必要がなくなりましたね。急な出張が入っても「いってらっしゃい」と快く見送れるのはあります。正直、メイドさんがいれば、家のことは回っちゃう。

――日本人だからこそ難しいことはありますか?

Aさん:一緒に住むとやっぱり情がわきます。メイドさんのお父さんやお母さんが亡くなったときはお金を包みました。でもそうすることが正しいのかわからなくて、迷いました。

Eさん:知人から聞いた話ですが、あるメイドさんが任期満了の記念に手作りケーキを焼きたいと言い出したらしいんですが、でもそのケーキの中に、なんと宝石を隠していたらしいんです。

すごく信頼していたメイドさんだったそうで、とてもショックを受けていたそうです。日本人だから、こちらがしてあげた分だけ相手からも気持ちが返ってくると思ってしまう。裏切られて最後に傷つくのは自分だから、きちんと線引きをしなきゃと思いますね。

Dさん:すごく難しいけれど、メイドさんはあくまでも「稼ぎに来ている」として認識したほうがいいかもしれないですね。

Cさん:あとは、日本の親族から「メイドさんを雇うなんて」と白い目で見られたことがあります。日本人にはメイド文化が浸透していないので、メイドさんを雇っていること自体をネガティブにとらえられてしまう。

心と時間の「ゆとり」を手に入れた

――メイドさんを雇った一番のメリットはなんだったと思いますか?

Bさん:朝起きたときに、部屋がきれいになっていると気持ちよく1日が迎えられることですね。私は、ご飯を作る、子どもと遊ぶといったゼロからプラスにすることは楽しく感じるけれど、洗濯をする、食器を洗うといったマイナスからゼロに戻すことはストレスを感じる。そういった家事を担ってもらえる存在はありがたいです。

Aさん:家事が好きな人はメイドさんを雇う必要はないかもしれませんね。私は、そこまで家事が好きではないし、それなら外で働くほうがいいと思ったりするので、雇うメリットを感じます。夕食を作ってもらえると、「じゃあ、それまで遊ぼっか」と子どもとのんびり遊んであげられる時間を持てるのがいいですね。

Dさん:日本はどうしても女性が我慢をするという文化が根付いていると思うんです。でも、ママがハッピーだと、家族がハッピーになる。夫にとってもその方がいいと思う。アウトソースできるものはしてかまわないと思っています。

Eさん:メイドさんがいなければ、子どものお風呂もご飯もとにかく「早く終わらせる」ことだけに一生懸命になってしまう。ゆとりがあるからこそ「子どもと2人の時間を持ってあげよう」と積極的に思えるようになりましたね。

必要なのはマネジメントスキル

以上、メイドさんを雇っている5人の方々に語ってもらった。デメリットについての声もあったが、メリットも多く感じられるものだったのではないだろうか。

同じ日本人、ときに家族であっても、誰かと暮らしていくのは簡単なことではない。外国人メイドさんとなれば、ますます難しく、マイナートラブルはつきものだ。それでも彼女たちは、トライアンドエラーを繰り返しながら、メイドさんを、そして家庭をマネジメントしていた。

日本では人材不足やコストの問題もあり、メイドさんを雇うのは容易でないのが現状だ。しかし、共働き家庭が増え日々慌ただしい生活を送る人も増える中で、生活にゆとりが生まれるというメリットは大きい。もし安心できるサービスや人が見つかるなら、試しに取り入れてみるのもいいのかもしれない。

http://toyokeizai.net/articles/-/125250

東洋経済オンライン

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