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外国人児童の学習支援

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外国人児童の学習支援/可児市・今渡北小の国際学級

日本語、通訳交えて指導

2014年 9月22日
先生と通訳3人で授業が進む低学年の国際学級=可児市今渡、今渡北小学校
先生と通訳3人で授業が進む低学年の国際学級=可児市今渡、今渡北小学校

外国人が数多く暮らす可児市。市内の小中学校では大勢の外国人児童・生徒が学んでいる。主にブラジル、フィリピンの国籍を持つ子どもたちで、その現状や背景はさまざまだ。日本人の子どもたちに交じって送る学校生活に課題は多いが、将来の夢に向かって懸命に学んでいる。市内で最も多くの外国人児童が在籍している可児市今渡の市立今渡北小学校(小﨑康史校長、児童858人)では、外国人児童が安心して学べる環境作りに取り組んでいる。 岐阜県教育委員会の調べによると、県内の小中学校で学ぶ外国人児童・生徒は増加傾向にあり、本年5月現在、小学校に1307人、中学校に646人の子どもたちが在籍している。このうち可児市の外国人児童・生徒数は約400人で、県内で最も多い。

外国人保護者を対象にした国際懇談会。学校行事などについて説明を受けた=昨年4月、同小
外国人保護者を対象にした国際懇談会。学校行事などについて説明を受けた=昨年4月、同小

同小の現在の外国人児童はブラジル国籍が47人、フィリピン国籍が68人、そして、ペルー国籍が1人。県内で最も多い外国人児童が学ぶ小学校だ。 外国人児童は基本的には日本人の子どもたちと同じ教室で同じ授業を受けるが、来日が間もないなどの理由で日本語の習熟度が足りない子どもたちは、国語の授業の時は国際学級へ教室を移動し日本語を学ぶ。国際学級は、低学年、中学年、高学年、そして日本語初期指導教室の合わせて4クラスある。

同小では、専門性を持った指導的教諭で、県内に4人いる多文化共生主幹の山下啓子教諭を責任者に、教諭、講師(非常勤含む)やポルトガル語、タガログ語の通訳ら合わせて9人体制で外国人児童の教育に当たっている。

低学年の国際学級では、ブラジル、フィリピン国籍の1年生7人が漢字ドリルを教材に勉強していた。先生が1人と通訳が3人。まさにマンツーマンで授業が進む。日本語の理解力に差があり、授業を進めるには相当なエネルギーが必要だ。この日は時間内に、漢字7文字をノートに書き写すことができず、宿題となった。

高学年のクラスでは、4人の6年生が電子黒板を使って「漢字の成り立ち」を学んでいた。フィリピン国籍のタンポス・ジュニチ君(12)は日本の大学へ進み、将来は建築設計士になる夢を持つ。また、同じくフィリピン国籍のラニセス・イズミさん(12)は日本の高校へ進学した後、料理人になるのが夢だと話してくれた。

外国人児童が安心して学校で学ぶためには、保護者への働きかけが大切だと山下主幹は話す。保護者の学校への理解が、子どもたちの学校での生活態度につながる。

学校からのお知らせを必ず読んでもらうため、色紙に印刷するなどの工夫をしたり、懇談会や運動会など学校行事への参加を強く呼びかける。文化の違いはもちろん、学校制度の在り方など、母国との違いを理解してもらうための作業を地道に続けている。

こうした取り組みは3年前から本格的に始まり、児童の欠席が減ったり、学習費の未納がなくなったりと成果は徐々に上がってきているという。

今後、外国人の定住化傾向が高まると考えられており、子どもたちも母国に帰らず、日本に住み続ける。ほとんどの子どもたちは、日本での高校進学を希望し、そのスタートにあたる小学校での教育の重要性がますます高まっている。

同小が大切にしていることは「一人一人を大切に」。「互いを分かり合おうという気持ちに国籍は関係ない」と語る山下主幹。保護者への思いに寄り添い、子どもたち一人一人にきめ細かな教育を行うため、互いの違いを認め合い、違いを埋めていく作業がこれからも根気強く続く。

(片岡学史)

http://www.gifu-np.co.jp/tokusyu/nie/ima/201409221.htm

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