体験操縦の体験記

「保険会社勤務のOY」です。

 それまで気にもとめなかったが、セブ・マクタン国際空港ターミナルの向こう側に、実はいくつかの建物がある。その中の一つがフライヤーズの格納庫。

私がフライヤ−ズのセスナに乗るべく空港敷地内に着いたちょうど > そのとき、関空行きPRがまさに離陸しようとしていた。 > 普段は何とも思わないが、地べたに立って見るとその機体はひたすら巨大だ。ものすごい轟音とともにそのジャンボが走り出した。飛ぶ、と言うよりむしろ「うんとこどっこいしょ」と言う感じで強引に天空から引っ張り上げられる感じ。滑稽なまでに重そうに見えた。

 一方私たちの乗るセスナはきわめてシンプル。実は、私は古式ゆかしい母親から「セスナなんて危ないからやめて > おきなさい」と言われていた。ジャンボと比べるとおもちゃのようなかわいらしさだ。そうこうしているうちにいざ出陣。この日の機材は二人乗りだったため、私はパイロットの隣に搭乗した。目の前には操縦桿と計器がいっぱい。自分が小柄なせいか意外にも計器類で前方の視界はほとんど遮られる。パイロットと同じヘッドフォンをすると「ラジャー!」なんて言ってみたくなった。ヘッドフォンからは管制塔とパイロットのやりとりが聞こえてくる。プロペラは勢いよく回っている。 私の心臓もドキドキである。と、その次の瞬間、既に機体は浮いていた。わずか120km/hほどしか出していないのに、である。ふんわり、だんだん滑走路上のセスナの影が小さくなっていく。わわ、すごいではないか!普段高速道路で120km/h位平気で出すことを考えると「このスピードは飛べるスピードなのだ」。小さな機体は遠慮なく高度を上げ、眼下にはマクタン島全体が見渡せる程になっていた。常夏のセブでは上空の方が天然のクーラーで遙かに快適である。私たちの目的地はモアルボアルと言うダイビングスポット。セブ本島を右に見ながら南下していく。途中、私が宿泊しているホテル上空を通った。ああ、私のお部屋!セスナからはこんな発見も可能である。もちろん、航空写真も撮ってしまった。モアルボアルはセブ本島の西側に位置するので山を越えなければならない。さらに高度を上げる。鳥か凧か判らないが、白いものがセスナの下をゆったり動いている。前日にダイビングをしたせいか、何故か魚に見えてしまった。弁明させて頂くと、上は限りなくブルー・・・地上から見るより遙かに空は深く青い。地上は銀色に輝く海と、熱帯の黒い程の緑。その中間に私はまさにいるのである(だったらどうして魚か、と我ながら思うが)。何処にも属していない、なにものにも捕われていない特別な感覚はまさに至福である。恐らくこの臨場感は、普通の飛行機と比較して、はるかに風通しの良いセスナだからこそ、楽しめるのかもしれない。目的地モアルボアルの上空を心ゆくまで旋回してもらって、帰り道。外はさっき見た風景だ。今度は計器類に目が奪われる。先程から目の前で小刻みに動く操縦桿を握ってみたくて仕方がない。思い切ってパイロットにお願いすると、気流の安定しているところで許された。わお!操縦桿を通して風を感じるではないか。もちろん、それは私の思い込みで、単に操縦桿の微かな振動なのかもしれない。でも、その時の私はそう感じた。すごい。すっかりその気にさせられてしまった。本当に風の力に飛ばせてもらっているんだなと実感した。セスナは極めてアナログである。テレビで見るようなジャンボのコックピットとは大違い。気流も五感で感じることができる。このアナログさが心地よい。言われてみれば私たちのデジタル社会、どれだけの無理の産物かということを思う。それだけ私たちの日常は危険だということだ。もちろん、それを元に戻すことなんて今更出来ない話だが、自然に生かしてもらうことの心地良さは「ゆりかご」のようでたまらなくいい。セスナだって文明の利器であるが文明もこの程度がちょうど良い。 折角日常から逃避してきているのだ。

普段と違う尺度で解放感を味わおう。まず、自然の力ありき。それを体感できるセブ島のアクティヴィティだ。

戻る

「とびうお」さんの体験飛行談